2021年に読んだ本+漫画を振り返っておきたくて!
新刊かどうかは関係なく単にわたしが読んだもの(の一部)です。再読を含みます。
ストーリーがあるものについてはネタバレはしないよ。本の公式のあらすじでわかるレベルのことしか書いてないのでご安心ください。
エッセイその他
ぼくはイエローでホワイトで、ちょっとブルー/ブレイディみかこ
ブレイディみかこさんの著作を初めて読んだ。
とかく「分断」という言葉が頭をよぎることの多かった年に読めてよかったなと思う本。
「共感」の取り扱いがものすごく下手くそな私は、この本で出会ったempathyという単語にちょっと救われた気がする。
日本の中でいう共感って、いつのまにか同調圧力にすり替わっていることが多い気がして。
そうではなく、あなたと私は違うけど、あなたの気持ちや立場を想像することはできる。想像力がいかに大切か…という内容を受け取った気持ちになってホッとした。
今年の9月には2も出たのでそちらも読了。
一度きりの大泉の話/萩尾望都
とんでもないものを読んでしまったな…と読了後うめいた本。こんなの読んでしまったらもうなんにも言えなくなる。
なにかに深く傷ついたときに、それをどう乗り越えたり、はたまた乗り越えなかったりするかは、全てがその人自身にかかっているのであり、
言ってしまえばそれこそが究極の自由なのかもしれない、と思う。
傷ついたことに「わたしは傷ついた」と表明するのは魂の自由さの象徴なのかもしれません。
この本を萩尾望都先生が書かれるきっかけになった(と書くと正確ではないけど、大泉サロンをとりまくムーブメントのきっかけではあるので)「少年の名はジルベール」をなぜか私は刊行当初に読んでいたので、
余計に衝撃が大きかったです。
萩尾先生のようなレジェンドに「共感する」という言葉を使うのがおこがましすぎるし、さっき書いたとおりそもそも共感とは?となってしまうんだけど(しつこい)、
それでも「おっしゃりたいことがわかりすぎます」と思いながら読んでいました。
すぐに読みたくてついKindleで買ったんだけどたぶんそのうち紙の本で買い直します。
萩尾先生が、ただ創作だけに集中していられる環境がどうか叶いますように。
女子をこじらせて/雨宮まみ
存在はずっと前から知っていたけど著作を読んだことのなかった雨宮まみさんの本をKindle Unlimitedきっかけで初めて読んだ。どうしようもなくひりひりした……。
これもまた、例えば10年違うとそんなに目に映る世界が違うのかと、絶望まじりにくらくらする思いがする一冊でもあった。
生きることをどこまでも深く深く、ペン先が紙を突き破るような勢いで書き綴られる雨宮さんの文章。
この生命力に溢れた素晴らしい文章を書く人が、もうこの世にはいないのかと思うと、どうしても寂しくて、もっとこの人の書く文章を読みたかったな、という気持ちで涙が出てしまう。
エネルギーが必要なので立て続けには読めなくて、「女の子よ銃を取れ」は途中で止まっています。また今度読もう。
吉本ばななが友だちの悩みについてこたえる
タイトルどおりそのまんまの本!帯に、
「厳しすぎ!」という人と、「大好き!役立ちました!」という人がはっきり分かれた珍しい本です。
とある通り、本当に受け取る人によるだろうなと感じる一冊。
わたしは後者なんですが、そもそも最初の悩みへのお答えの始まり方からして、一切の手加減がない…!
Q.仲がいい友だちに素敵な恋人ができたり、結婚をしたり、子どもを産んだり、好きな仕事をしていたり、イキイキとしている姿を心から祝えないときがあります。大切な友だちのことを妬んでしまうときは本当に苦しく、罪悪感も感じます。こんなとき、何か対処法はありますか?
A.妬んだ段階でそもそもが仲がいい友だちじゃないのではないでしょうか、本当にこれに尽きると思います。
自分がその人のことをどんなに大好きでも妬んでしまった段階で、仲がいい友だちという距離感を超えてしまっている。私はそう思います。
(以下回答が続きます)
出だしの一発目からコレで、あまりにも!なので、読んだ瞬間つい声に出して笑ってしまった。たしかに厳しすぎる!という声は出そうだけど、どうしても「ですよね~」と思って読んでしまう…。
友人関係って、若いうちだけ悩むかというとそういうもんでもないし、今とくに悩んでいなくても総合的にいろいろな示唆を得られる場合が多そうな一冊だなと思いました。
そしてこの感じ、過去にどこかで読んだ…と記憶をたどって思い出し、ちょうど10年ぶりに森博嗣の「自分探しと楽しさについて」をついでに再読。
10年前に読んだときは、それこそ目からウロコが落ちまくるような、雷に打たれたような衝撃を得た本だったのだけど、今読んだら、普段自分が考えて行動している時の考え方にそっくりな話が展開されていて、そのことにものすごく驚いてしまった。
こういうふうに考えればいいのか!と驚いて受け止めた内容を、10年かけて無意識のうちに自分の中で内面化していた、ということになりそう。
それってすごいことじゃないですか?文章によって与えられた影響の大きさに感じ入ってしまう。
そんなつもりで読んだわけではなかったけど、人生に大きなインパクトを与えられた本だったのだなぁと、なんだかしみじみしてしまった。
少し本筋から離れる内容なんだけれど、最後の方に「金がかかる楽しみを目指す人は、金を得るだろう。」と書いてあったのには、自分のことすぎてゲラゲラ笑った。予言されていた。
存分に趣味を楽しみたい!と思えば人は転職もするものです。
小説
王とサーカス/米澤穂信
久々に読んだ米澤穂信。もう、びっくりするくらい面白かった。米澤穂信作品に特有の、ざらりと心に引っかかる「なにか嫌な感じ」が、読後感としてはほぼないと言えそうで、かなりなレアケースだと勝手ながら思う。
「さよなら妖精」に登場した大刀洗万智が大人になった姿を描く作品。
新聞記者をやめ、フリーの記者として初仕事に向かった先のネパールで、彼女は思いもかけず王族殺害事件に出くわし、その事件の真相に迫ろうと異国で孤軍奮闘する。
その足取りが普通に無茶でシンプルにスリル満点で、ミステリーとして抜群に面白いし、
読んでいる間中ずっと、訪れたこともないはずのカトマンズの街の埃っぽい匂いを感じていた。
アジアの異国に流れる独特の空気を、否応無しに肌で思い出す感じ。(紛らわしい書き方をしたけど、ネパール以外の東南アジア諸国は何箇所か行ったことがあるので)
ただただ筆力に唸った。前後作を知らなくても楽しめるつくりなので単品としておすすめです。
しかしその後、この流れでウキウキして読んだ「真実の10メートル手前」と「満願」は、しっかりと嫌な感じが残ったので笑ってしまった。うん、やっぱそうよね。
薔薇のなかの蛇/恩田陸
なんと理瀬シリーズ、17年ぶりの新刊!だったらしく。出てしばらく経ってから電車の車内広告で知り、思わずその広告を三度見くらいした。イギリスの古い貴族のお屋敷に招かれた理瀬が「祭壇殺人事件」に巻き込まれていくお話。
理瀬は今回ゲストの立場で語り手ではないので、彼女の怜悧なまなざしを直接味わうことができないのはちょっと寂しい!
でももう理瀬シリーズの続きがこの世に存在している事実だけで十分幸せなので、書いてくれてありがとう~!の気持ち。
ひとことでいうと雌伏の時、という趣の理瀬でした。また続きが読めますように!
灰の劇場/恩田陸
作中に出てくる語り手である小説家は、半分以上恩田さん自身の姿なのだろうなぁ、と感じる。モチーフになっている三面記事は、実在した新聞の記事なんじゃないかなぁ、と。
自殺とみられる死を遂げた40代の女性二人は、学生時代の友人同士で、ともに独身でアパートに同居していた。
ある日新聞で目にした、とある女性二人の死を扱ったごく小さな記事の存在がなぜか長年忘れられず、
もはや取り憑かれたように、ある種偏執的に彼女たちの死の背景に思いを巡らせ続ける小説家。
抜群に面白いタイプの恩田作品ではないので(確実に読者を選びます)、広く勧めるかというとそうでもないんだけれど、私は彼女の作品は全部読むと決めているので満足でした。
その新聞記事が掲載されたという90年代なかばと2021年との間には、思った以上に大きな隔たりがあるのだなと感じさせられる描写がとにかく多く、そちらへの驚きが強く印象にのこった作品。
なんていうのか、社会に出ようとする女性にとって、看護師や教師などの専門職以外だと「腰掛けの事務職」しかほぼ選択肢のなかった時代って、ほんの20~30年前の話なんだな…と思うと、なんだか身につまされた。
スキマワラシ/恩田陸
とある特徴のあるモノに触れると、そのモノの持つ記憶が意識に飛び込んできてしまう特異体質の青年が主人公。読後感について書こうとしたことを書くと、人によってはネタバレになるな…と思ったので何も書けなくなってしまった。笑
主人公の語り口は好み!一人称で描かれる恩田作品はわりと珍しいんですよね。
展開について想像がつく…とまではいかないのだけど、「こうなるかな?うん、やっぱりそうなるよね!」みたいな結末ではあったので、予想の範疇内におさまってしまったのがちょっと物足りなかったかなぁ。
しかしそれを具体的に言うのもネタバレになるので、何も書けない…。笑
もうちょっとスペクタクルかな?と思ったけどそうじゃなかったです。
今年じゃなくだいぶ前に読んだやつですがついでに紹介すると、
ここ数年で出た恩田作品のスペクタクル系統だと「夜の底は柔らかな幻」が抜群に面白いと思ってます。
漫画
大奥/よしながふみ
10年以上前に前半の数巻だけ読んでいて、続き気になる~と思いながらそのままになっていたのを、完結をきっかけに一気読みしたんですが。もう、本当になんなんですかね……!?
エンターテイメントというか、フィクションの可能性の果てしなさに、とことん焼き尽くされました。
ありえんくらい泣きながら読んだな…どの時代の将軍にも大奥総取締にも、癒せぬ痛みや誰にも踏みにじれない誇りが同居していて、
本当によくこんな物語を織り上げることができるよなとあっけにとられてしまった。
最終的に、江戸時代って実はこっちが正史だったんじゃないか…?ってなってしまう。どうなっとるんじゃ。
残酷な神が支配する/萩尾望都
これも10年くらい寝かしていた漫画でした。2巻まで買っていたんだけどあまりの辛さにギブアップしていたのを、覚悟を決めて最後まで読んだ。「救い」ってなんなんだろうと思わずにはいられなかった。
どうしてそっちに傾いてしまうのか、いくら歯がゆくやるせなく思ってもどうしようもできない…
自己決定権みたいなもの、己の存在を己が許すところに辿り着けるかどうかという話になると、本当に外からは手の施しようがなくて、
だけどだからといって手を離していいわけではなくて…
これを描こうと思い、実際に最後まで丹念に描き切った萩尾先生の凄まじい胆力にただひれ伏したい気持ち。
かげきしょうじょ!!/斉木久美子
マブから数年来「面白いから!!頼むから読んで!!!」と言われ続けていた漫画。(私が勧められるのが苦手な人間であることを知っているゆえ「あんまりしつこく言うと読んでくれなくなるかなと思って、途中から言わなくなった」とまで言われて笑ってしまった。すまん…笑)
面白すぎて打ちのめされて心象風景として床に伸びました。なんて面白いんだ。
自分が宝塚を好きになって以降に読んだ、というのはあんまり関係がないレベルでひたすらに楽しい。ただただ青春のきらめき、スポ根的な正統派の「努力友情勝利!」って感じである。
主人公・さらさにつきまとう、抗えない宿命のようなもの、級友や幼馴染との関係性の間に確固たる存在感を持って横たわる「才能」という問題。
わたしは!天才が天才ゆえに背負う孤独が!本当に好きなんだ!!!と読みながら叫びそうになった。
掲載誌が途中で変更になったゆえ、移動前のお話は「1巻」ではなく「シーズンゼロ上下巻」なのでご注意くださいね!
これから読む人はシーズンゼロからどうぞ!
これもKindle Unlimitedでシーズンゼロと3巻あたりかな?まで読めた時期があって、そこから全巻まとめ買いしました。
関係性を描くのがうますぎて天才か!?になってしまった。
運動会の星さまのコマで「ヒッ」と声が出てしまったので、わたしは本当にそういうやつです。
*
5000字超えてしまってきりがないのでこのあたりで打ち止め!
他に鬼滅の刃一気読みとかもしてるんだけど!
こういうことがやりたいならもっと定期的にまとめるべきだよね~。でも年内に書きたかったので満足しました。
これでも2020年よりは色々読めた。
インプットとしての読書量がものすごく減ってしまったことに危機感があるので、引き続き増やしていきたいな。